文・小川裕介 写真・金子淳
朝露にぬれた桟橋に手をかけ、雲間から朝日を望んだ。聞こえてくるのは水音ではなく、一帯に響く鳥のさえずりだった。霧が立ちのぼる眼下の景色は、海ではなく――。
朝日が桟橋を照らし、正面に五つの山が連なる「阿蘇五岳」がそびえていた。眼下には内牧(うちのまき)温泉の街並みが広がり、振り返ると外輪山が見えた。「360度、すっぽりと阿蘇の山々に包まれているような気持ちになるでしょう」。地元の温泉街で食堂を営む今村聡さん(47)が言った。
熊本県阿蘇市の田子山(653メートル)の展望台「そらふねの桟橋」。コロナ禍に揺れた2020年春、温泉街の若手グループが地元産の杉材で設置すると、SNSで「映える」スポットとして若者を中心に一気に拡散した。
一帯は雲海がよく現れ、そんな日に桟橋に立って撮影すると、雲の海の中に船出していくような写真が撮れる。情報が広がり、週末は数百人が訪れる。だが地元の元区長、大倉勝弘さん(80)は「最近まで、若い人が興味を持つ山ではなかった」と振り返る。
記事後半では、阿蘇名物「あか牛丼」のグルメスポット紹介や会員登録すると応募できるプレゼントもあります。3月5日(日)締め切り。
かつて牛の放牧地として使わ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル